居酒屋八朔

旬の食材と新鮮な海鮮料理が味わえる『西短の野球部精神』あふれる店長さんのお店

2021年4月28日、コロナ禍のなか北九州黒崎の商店街に
「居酒屋 八朔」さんはオープンされました。

こちらのお店とのご縁は全くの偶然からでした。

私たち夫婦はお酒を飲みに行きたくなるとJR黒崎駅前にある商店街・通称「カムズ通り」に行くことが多いのですが、この日5月3日はコロナ禍の影響もあり、多くのお店が閉まっていました。

「どうしようかな…」とうろうろしていると、一人の男性がお店のチラシを差し出してくれたのです。

“市場直送の新鮮食材を使った海と山の幸をリーズナブルに楽しめます”

(開店当初のチラシ内容ですので、内容・金額は一部現在とは異なります)


と謳ったチラシに心惹かれた私たちは、チラシを渡してくれた男性に尋ねました。

「日本酒はどんな銘柄がありますか」

私たちは「酒」といえば日本酒。しかも純米酒で冷酒限定。会社の宴会でも「とりあえず生ビールで乾杯」の声を物ともせずに一杯目から日本酒しか飲みません。
また大手酒造メーカーではなく各地の地酒を好むので、日本酒の品揃えが好みかどうかで行くお店を選ぶことが多いのです。

するとその男性はすぐお店に戻って確認して下さり「猿喰、池亀、船中八策があります」とお答え頂きましたので、喜んで入店させて頂きました。

店内で迎えて頂いたのは店長の井上浩一さん。
とても感じの良い朗らかな方で、私たちが日本酒党と知ると開店祝いに頂いたという「醸し人九平次 雄町 SAUVAGE」「風の森 ALPHA TYPE1」まで出して頂きました!

新鮮なお刺身に真鯛のあら炊き、ぶりかまの塩焼きに天ぷら盛り合わせ、さらには牛すじ大根のパイ包み焼きと、海の幸山の幸に和洋折衷を上手く取り入れたお料理の美味しさにもう大感激でした!

店長さんの確かなお腕前と、ユーモアをまじえた会話、また「~はあと○分で焼き上がります」といった細やかな気遣いの一言など、本当に心地よく楽しい時間を過ごさせて頂いたのです。

すっかり気に入った私たちは、その後1週間経たないうちに再訪しました(笑)
すると、即出して頂いたのが「島らっきょの天ぷら」でした。

もしや他のお客様のオーダー品がこちらに来たのか?とビックリしたんですが、なんとこれは突き出しとのこと。凄すぎ!!
次に来たら食べようとチェックしておいたお料理も次々注文し、改めて「美味しいなぁ~楽しいなぁ~」と大満足いたしました。

いつ伺っても朗らかな笑顔で迎えて下さる井上店長さんの接客応対が心地好いことこの上なし(^^)

また、棚に飾ってある関係者の方々からお祝いに頂いた日本酒の一升瓶を示して「どれでも好きなものを選んで下さい」と言って下さり、さらには冷酒しか飲まない私たちのために、徳利に移して氷風呂に浸からせ冷やして下さるお心遣いが本当に有難く、ついついお酒を飲み過ごしてしまうのでした♪

以来、私たちは「飲みに行きたいね」となると真っ先に「居酒屋 八朔」さんを念頭に置きます。
時には息子も交えた家族3人揃ってお伺いし、夫婦だけだと食べ切れないかもとオーダーを躊躇していた舟盛り刺や釜飯、鯛茶漬けまでたっぷり頂くのも定番になりました。

新鮮な海産物はもとより、厳選された旬の素材の味を活かして提供して下さるお料理はどれも本当に美味しく、カウンター背面に掲げられる「本日のおすすめ」を眺めては「どれにしよっかなぁ~♪」と毎回ウキウキワクワクしてしまいます(^^)

店長の井上さんはこれまで九州で名の通った飲食企業で働いておられましたが、それにはあえて触れようとはなさいません。

「有名な処の名前だけに乗っかっても意味がない。だからここ、黒崎の八朔が自分の始まりなんです」

そうおっしゃる井上さんですが、黒崎の地には「縁もゆかりもなかった」とのこと。

このお店の斜め向かいにある「うどん八朔」の店主さんと共に仕事をされていたことがあり、「黒崎に来て居酒屋の店長をやらないか」と誘われたのがきっかけだったそうです。
(私たちにチラシを渡してくれた男性が、実はこの「うどん八朔」さんの店主さんだったのでした。縁結びの神様!)

「自分で商売するのも考えましたけど、コロナ禍真っ只中だったから借金を作る羽目になるかもと躊躇してたんですね」

知己のお誘いとはいえ、その他には誰ひとり知り合いがいなかったエリアで店を始めるのは、さぞご不安だったのでは?とお聞きすると

「不安はなかったです」

と即答が返って来ました。

「知らない街で挑戦することがむしろ楽しかった。今までは名の知れた会社の下でやってきたけど、ここからは自分自身がどんだけやれるかで実力が試される。何もせんで『やれません』とは言いたくなかったし、自分でいろいろなことをやってみたかった」

活き活きとした表情でおっしゃる井上さん。私たちがはじめてこのお店にお伺いした時、とても溌溂とした気概に満ちておられたのも、今にして思えば「楽しもう。気持ちよくやってやろう」という心意気の表れだったのかもしれません。

小学一年生から少年団で野球を始めた井上さんは、あの新庄剛志さんの母校である西日本短期大学附属高等学校で野球に打ち込む青春を送って来られました。

「新庄先輩とは残念ながら入れ違いで一緒にはやれなかったんですが、高1の夏に甲子園で全国優勝したのは嬉しかったですね」

今も何かにつけ『西短の野球部精神』が自分の基本になっている、とおっしゃいます。逆境において「常に挑戦する」「それを楽しむ」という姿勢もきっとそうなんですね。
高3の夏が終わり野球部を引退した後、初めてアルバイトをしたのが飲食店だったことから「料理を作る楽しさを知った」とのこと。

そのお言葉通り、カウンターで調理をされる時の井上さんの表情はいつも本当に楽しそうで、お忙しいなかでも鼻歌が聞こえてきそうなほどニコニコしておいでなんです。

知らない街で「ここでやれたら本物」と気合を入れて臨んだ井上さんでしたが、黒崎に来てみると意外な縁が待っていました。

水道業者としてやって来られた方がなんと前の職場の部下だったという、まるでドラマのような再会があったのです。
それ以来、何かにつけて顔を見に来てくれたり、忙しい時にはお店に入って数時間手伝ってくれることもありました。

開店の際には後輩にあたる小倉の酒屋さんが生ビールのサーバーも冷蔵庫も用意して下さったそうで、今もお店で出す日本酒をあれもこれもと注文する井上さんに「もういっぱいいっぱいです!」と泣きを入れながらも用意して下さるのだとか(笑)

また、仕入れ業者さんたちも納品ついでに八朔さんで息抜きをされたり、冗談を言い合ったりしておしゃべりを楽しんでいかれます。
私が取材に伺った際も入れ代わり立ち代わり、業者さんが井上さんとの会話を楽しむ光景を見せて頂きました。
野菜などは極力黒崎で仕入れることにされているそうで、届けて下さる八百屋さんとの親し気な会話からも、地元の絆を大切にされているのが伝わってきました。

さらには隣の菊鮨さんはじめ黒崎で飲食店をなさっている方々が、ご自分の店の営業を終えられてから八朔さんに「ほっと一息」をつきに来られることが多いのです。

仕事終わりの疲れも何のその。皆さんニコニコして八朔さんに入って来られ、また小上がり席ではなくカウンターに座りたがる人が多いとのこと。井上さんとの軽妙なおしゃべりをとても楽しみになさってるんですね。

「お前らもう帰れよ~」

と井上さんも笑いながら歓談は続き、閉店時間は午前3時なのですが気が付けばもう朝ということも多いとか。

朗らかでユーモアたっぷりな応対、美味しいお料理にお客様も同業者さんも、皆さん時を忘れて居着いてしまわれるようですね。

そして居酒屋八朔さんといえば、出されるお料理の「焼き目」や「盛り付け」の美しさが素晴らしい!
彩り、高低差のバランス、器の使い方など本当にきめ細やかな心遣いに満ちていて、出された瞬間に「うわぁ!」と歓喜の声を上げてしまうことがよくある私です(笑)

見て美しく、食べて美味しく、また給仕も気持ち良いとなると本当に幸せで仕方がありません♡

この春で開店3周年を迎えられた「居酒屋 八朔」さん。
コロナの緊急事態措置・まん延防止重点措置のため、かなり厳しい時期が何度もありましたが、そんな中でもできる限り営業を続けて来られました。

「コロナ保険にいっぱい入ってたけどなかなか罹患しなくて。スタッフがかかった時は『俺に伝染せ!』って言うたくらい。でも伝染らなくて。結局その後別のとこから伝染してやっと保険金が出たんで、掛け金無駄にならんで済みました(笑)」

と、その時期の苦労も冗談にしてしまわれます。
でも厳しい中がんばって来られた甲斐あって、今やその評判が広がって平日でも満席が多く、本当に多くのお客様から愛されるお店になられました。

「来て下さったお客様をはじめ、同業者さんや仕入れ業者さんのご紹介で来られる方が多いんですよ。僕もいろんなお店に行かせてもらいますし、料理の作り方を聞かれたら教えてあげたりもします」

自分の店だけじゃなくてこの黒崎の街全体が盛り上がるようにしたい、いい意味で互いに競い合って行きたい、とおっしゃいます。

「美味しくて良いお店がたくさんある中で、うちの店の良さは『何でもある』というところにしたいですね。よそのお店に無いもの、普通の居酒屋さんでは出せないものを出したい。お客様には気楽に来て頂けて、なおかつ他には無いものをお出しして喜んで頂きたい。利益より何より『居酒屋八朔、あの店はいいよね~』って言われる店になりたいです」

2024年3月からはお向かいにあるうどん屋さんも居酒屋八朔2号店となり、また5月からは2階に20名ほど入れる宴会場もできました。こちらの宴会場ではボートレーサー西山貴浩選手のYouTube撮影も行われています(西山選手のYouTube【ニシヤマの部屋】はこちら)

新たなる相棒・早田さんも加わって、井上店長さんはエンジン全開で頑張っておられます♪

さあ、今夜も「居酒屋 八朔」さんに飲みに行きましょう!

(2023年4月初出、2024年10月加筆)

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