ほりえラーメン

1960年創業。朗らかで可愛いおばあちゃんの作るラーメンが心に沁みました。

【鹿児島の女神がおわします店】

 

のれんも看板もない店だと聞いていたので、地図を片手にじっくり建物を覗いてゆくと‥‥ありました!

一見倉庫か工場か何かと見まごうようなガラス戸の向こうに、ラーメン食べてるお客さん発見!

一歩足を踏み入れると傾いたカウンターの向こうから、
小柄な可愛いおばあちゃんが

「いらっしゃい!どうぞどうぞ入って!」

と笑顔で招いて下さいました。

内部は、昭和初期のレトロな民家。
しかも様々な日用品が置いてあり、座敷席もお茶の間状態です。

いやぁ~いい味出してます!ほんとにおばあちゃん家にあがらせてもらった、って感じですよ(^^)

ラーメン自体も素朴だけどすごく美味しい!麺がつるつるしてるしコシもある。スープは昔ながらの中華蕎麦、って感じでゴクゴク飲めるし、後味もよかったです。

これで1杯300円は値打ちものだと感激しました。大盛りにしても350円ですよ。

付き出しの漬物も美味しかったし、ごはんにこれだけでもOK!

ごはんは冷えてはいたもののツヤツヤしててお釜で炊いたおこげもあって、これまたこのお店らしくてとっても味わい深くて素敵です♪


おばあちゃん、息子用にとペットボトルでお水持ってきてくれたりなど、とても気遣って下さいました。

「一番可愛い時期やね~」

お孫さんとだぶらせておられたのか、息子を見る目はいっそう温かく優しいまなざしでした。

こんなに優しくて、美味しいラーメン作ってくれるおばあちゃんが自分の祖母だったらどんなに幸せだろう。
私は自分が生まれる前に父方の祖母も母方の祖母も亡くしているので、いっそう憧れを抱きました。

ほりえのおばあちゃん、どうぞいつまでもお元気で頑張って下さいね。


【鹿児島の女神の啓示】

※2017年4月、再び鹿児島へ※

2011年に福岡市に引っ越して丸6年。2017年春に再び鹿児島に戻ってきてから、一番多くリピートしたのは、このほりえラーメンでした。

古馴染みのラーメン屋さんも、新進気鋭で評判が高いラーメン屋さんも一杯ありましたが、

「おばあちゃんに会いたい」

そんな気持ちがどの店よりも勝っていたということかもしれません。

ところが、夫の仕事の都合でたった1年余りでまたも引越しすることになってしまいました。
永住するつもりで戻ってきた大好きな鹿児島だったのに‥‥。

泣く泣く市役所へ転出手続きをしに行った2018年7月のある日、

『鹿児島ラーメンの食べ納めは、やっぱりおばあちゃんのラーメン!』

と、自然と足はほりえラーメンに向かっていました。

その日は雨だったので先客はおひとり。私とほぼ入れ替わりに食べ終わって出て行かれたので、思いがけずおばあちゃんとゆっくりお話しできることに。

ご家族のこと、ご自分の手術経験のこと、この店を愛して下さるお客様方のことなど、いろいろとお話くださる中でひときわ私の胸を打つ言葉がありました。

「人に嫌な態度を取ったり、嫌なこと言ったりしたら自分が嫌でしょう。後味が悪くなるから」

ほりえのおばあちゃんは初見のお客さんでも常連さんでも変わらぬ温かさと優しさで迎えてくれて、近年は多くのインスタ用写真撮影にも笑顔で応えてくれていました。

「お客さんがよろこんでくれるからね」

相手への配慮ももちろんありますが、それ以前に自分自身が「人間として嫌だと感じることは人にしない」という、当たり前だけど忘れがちなことを示してくれたのです。

人に嫌われることを恐れて媚を売るというわけではなく、ただ自分にも相手にも気持ちよくしたい。だからそうする。皆で心地好くありたいから…。



これは人づてに聞いた話ですが、ほりえラーメンに泥棒が入ったことがあり、玉子を盗まれてしまったそうです。
でもおばあちゃんは「自分が玉子を出すからだ」と、以後はお店でゆでたまごの提供をやめてしまったのだとか。

こんな人のお店に泥棒に入るなんてあまりにも非道すぎるし、おばあちゃんは何も悪くないのに‥‥!


でも思いました。そんなおばあちゃんだからこそ皆が慕い、味方になりたいと思うのだとも。

たとえ人から嫌なことをされても自分はしない。やられたからやり返すなんて考えもしない。
ものすごくまっとうで、しかも人生経験を豊かに重ねたこの女神様の言葉だから何よりも正しい。人間、かくあるべきだと心から思ったのです。



引越しの後、この日に撮らせて頂いたおばあちゃんの写真と、私が感じ入った言葉についての感想と感謝を述べた手紙を送っておきました。

しばらく経ったある日の夕方、携帯に登録のない電話番号から着信が。エアコン設置工事の連絡待ちだったので、業者さんからかと思って電話に出ると、朗らかで優しい年配女性のお声が響きました。

「あの、鹿児島からですー!」

なんと、ほりえのおばあちゃんからお礼のお電話を頂いたのです!
(もったいなくてありがたすぎて、すぐこちらから架け直しました)

「今日は忙しかったから疲れてたんだけど、あなたのお手紙読んだら疲れが吹き飛んじゃった!ありがとうね!これがいっちばんの幸せ!」

息子さんといっしょに写真を見て手紙を読んで下さり、息子さんも
「かあちゃん、幸せだね」と言って下さったとのこと。

ありがたすぎてありがたすぎて、涙が出ました。

おばあちゃん、本当にありがとうございました。

また必ず鹿児島に行って、貴女の作る美味しいラーメンを食べに伺います。

(2019年1月初出、2024年10月加筆)


【HPリニューアルに際して付記】

2018年に鹿児島を再び離れた私は北九州に移り、幼かった息子も高校を卒業し大学生になりました。

その間、第二の故郷の様に思っている鹿児島へ何度も行きたいと願いましたが、コロナ禍がそれを許しませんでした。

ほりえのおばあちゃんのお店もやむなく休業となり、また長い間の自粛生活も相まって足が弱くなられたそうです。

年に数度お電話で朗らかなお声を聞かせて頂いてはいますが、やはりまたお店を開けるのは難しいとのこと。

おばあちゃん「見た目だけなら人からも『元気そうね~』って言われるんですが、足がねえ。痛くはないんですけど、ちょっと歩くと疲れるんですよ。上手く歩ける時もあるけど、もうずっとは歩けなくなっちゃって。もう仕方ないですけどね。仕事してた時とは違うから」

御年90を越されているご年齢を考えれば、ごもっともですよね。

おばあちゃん「でもね、元気だけはあるんですよ。人には負けないくらい。かかりつけのお医者さんもね、私があんまり元気だから『あんまり栄養のあるものを食べるな』って(冗談を)言うくらい(笑)」

おばあちゃんは息子さんに勧められて、小学1年生の国語や算数の勉強をしておられるそうです。

おばあちゃん「計算はまぁできるけど結構難しい。漢字も読めても書けません。そっと答えを見たりして(笑)ローマ字も書いた時だけ覚えてるけど、ページをめくったら忘れてる。2年生や3年生になかなか進級できません(笑)」

おばあちゃん、むっちゃ可愛すぎますって(>▽<)

鹿児島はじめ全国の「ほりえラーメン」ファンの皆さんもおばあちゃんのことを懐かしんで、いつも気にかけておられますよ、とお伝えすると…

おばあちゃん「ありがたいですねえ。そういう方々にも『自信満々で元気で威張ってる』ってお伝えください(笑)」



朗らかで可愛らしいおばあちゃんのお声に、私も安心と元気を頂いております。
おばあちゃん、いつまでもお健やかに!

2024/10記

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